自己肯定感
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三枚目の企画書
午後十一時の商品企画部には、真柴葵のデスクだけが灯っていた。
モニターには企画書が三つ並んでいる。来月の社内コンペに出す冷凍総菜の新シリーズ案だ。規定では一人一案でいい。けれど葵は三案すべてを仕上げるつもりでいた。半年前のコンペで、彼女の案は最終選考の手前で落ちた。あのときの部長の短い沈黙が、まだ...
大きな池の、小さな机
真壁遥が本社の先端開発室に呼ばれたのは、入社五年目の春だった。
地方工場の設計課では、彼女は「困ったら真壁さん」と言われる存在だった。治具の不具合も、ラインの小さな改善も、誰より早く答えを出した。だから辞令を見たとき、胸が高鳴った。ようやく本当の勝負ができる、と。
先端開発室は、噂どおりの場所だ...
親しき仲の作法
中堅の業務支援会社「リンクワークス」で、葵は十年来の取引先・高木部長の担当を任されていた。創業期から支えてくれた大口顧客で、社内では「高木案件は葵じゃないと回らない」と言われている。
その高木が、ここ数か月おかしかった。打ち合わせの席で、些細な誤字を見つけては三十分説教する。「君らはわかってない」...
自分だけの物差し
営業部の月次会議が終わると、会議室には重い沈黙が残った。売上ランキングがスクリーンに映し出され、上位三名には拍手が送られる。一方で、下位に名前が並んだ者たちは、足早に席を立っていく。
入社三年目の川島翔太は、自分の名前が下から四番目に表示されているのを見て、小さくため息をついた。
「また、あの位...
これでいい
人事部の会議室で、山崎理恵は自分のプレゼン資料を見つめていた。
三十四歳。入社十二年目。同期の中では出世が遅いほうだ。今回の社内公募制度で、念願だった新規事業開発室への異動を勝ち取りたい。そのための面接が、明後日に迫っていた。
「山崎さん、資料見せてもらっていいですか」
隣のデスクの後輩、高橋...
逃げない理由
営業部の片隅で、橋本浩介は両手で頭を抱えていた。
来週の大型プレゼンテーション。相手は業界最大手のクライアントで、獲得できれば部の売上目標を一気に達成できる。だが、競合は老舗の大手コンサルティング会社。勝率は良くて一割といったところだ。
「やめてもいいんじゃないですか」
背後から声がかかった。...
熱くなれない人
営業企画部の村瀬は、三年目にして初めてプロジェクトリーダーを任された。新規サービスの立ち上げという大役に、周囲は期待の目を向けていた。
「村瀬さん、このプロジェクトにかける想いを聞かせてください」
キックオフミーティングで、部長の木島がそう水を向けた。会議室には八人のメンバーが揃っている。村瀬は...