失敗から学ぶ
3件の記事
宛先違い
森下沙耶の名刺入れには、いつも「特別」が入っていた。
中堅の業務システム会社、ハルカゼ・システムズの営業三課。彼女の担当顧客は十二社あり、そのすべてが「森下さんは、うちを一番に考えてくれている」と信じていた。
「御社だけに先にお見せします」「この条件は、社内でもかなり無理を通しました」。言葉の...
三枚目の企画書
午後十一時の商品企画部には、真柴葵のデスクだけが灯っていた。
モニターには企画書が三つ並んでいる。来月の社内コンペに出す冷凍総菜の新シリーズ案だ。規定では一人一案でいい。けれど葵は三案すべてを仕上げるつもりでいた。半年前のコンペで、彼女の案は最終選考の手前で落ちた。あのときの部長の短い沈黙が、まだ...
落ちた高さの数えかた
葛西涼介は、その広告代理店で長く「会社の顔」だった。大型のプレゼンは必ず彼が締め、表彰式の常連で、若手はこぞって彼の話し方を真似た。好感度。それが彼の最大の資産であり、最強の武器だった。
ところがある案件で、彼は致命的な判断ミスを犯した。詳細は伏せるが、業界中に知れ渡るほどの失態だった。主要クライ...