営業 4件の記事

受け取る力

吉川俊介は、今年で十七年目の営業マンだった。部長職に就いてから五年、彼の頭の中にあるのは常に「数字」だった。  月初めのミーティングで彼が口にするのは決まって億単位の話だった。「三億の案件が動いている」「競合に五億を取られた」。それ以下の規模の話が出ると、吉川はノートパソコンに目を落とし、すでに別...
2026-05-18 12:46:48

帆柱の営業課長

田所は、提案資料を閉じる手を止めた。スマホには、半年前まで担当していた旧クライアントの社長、岡部からの誘いが届いている。 「来月、福岡で役員会がある。終わりに私の親しい役員も交えて夕食を、と思っているんだ。費用は気にせず来てくれ、というわけにはいかんが、来てもらえるなら、おそらく次の案件は田所さんに...
2026-04-25 09:13:23

「とりあえず」の呪い

入社三年目の春、営業部の田村健太は上司の佐藤課長に呼ばれた。 「お前、今年の目標は何だ」 「えっと、とりあえず売上を伸ばしたいですね。まずは去年より上を目指します」 佐藤は眉をひそめた。 「とりあえず、か。まずは、か」 田村は何を言われているのかわからなかった。 「お前、その言葉を使って...
2026-01-15 17:20:06

刺激の檻

営業部長の沢村誠一は、四十五歳にして自分が「永遠の新規開拓者」であることに気づいていなかった。 彼の営業成績は常にトップクラスだった。新しい顧客を獲得する瞬間、沢村の目は輝いた。初対面の緊張感、相手の懐に入っていく駆け引き、そして契約成立の高揚感。その快感を求めて、彼は次々と新規顧客を開拓し続けた...
2025-12-22 11:29:38