マインドセット
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「とりあえず」の呪い
入社三年目の春、営業部の田村健太は上司の佐藤課長に呼ばれた。
「お前、今年の目標は何だ」
「えっと、とりあえず売上を伸ばしたいですね。まずは去年より上を目指します」
佐藤は眉をひそめた。
「とりあえず、か。まずは、か」
田村は何を言われているのかわからなかった。
「お前、その言葉を使って...
ツキを呼ぶ男
総務課の窓際に座る五十嵐哲也は、社内で「ツイていない男」として知られていた。入社十五年、異動の話が出るたびに直前で白紙になり、担当したプロジェクトは軒並み頓挫し、昨年は財布を三回も落とした。
「また外れたよ、社内ビンゴ」
五十嵐がため息をつくと、隣の席の若手、河野が苦笑した。
「五十嵐さん、い...
カメ組の名刺
入社七年目の春、藤原健一は自分のデスクで名刺を眺めていた。「営業三課 主任 藤原健一」。肩書きは三年前から変わっていない。同期の村田はすでに課長代理だ。
「藤原さん、会議室空いてます」
後輩の山下が声をかけてきた。今日は新規プロジェクトのプレゼン担当を決める会議だ。
会議室に入ると、課長の田中...
動かない迷路
企画部の須藤拓真は、会議室の窓から外を眺めていた。
午後三時。本来なら資料を作成しているはずの時間だ。しかし彼は、机の上に広げたノートを前に、もう一時間以上同じ場所に座っていた。
「須藤、まだ考えてるのか」
ドアを開けたのは、先輩の工藤だった。五十代半ば、入社以来ずっとこの会社で働いてきた人だ...