脳科学
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受け取る力
吉川俊介は、今年で十七年目の営業マンだった。部長職に就いてから五年、彼の頭の中にあるのは常に「数字」だった。
月初めのミーティングで彼が口にするのは決まって億単位の話だった。「三億の案件が動いている」「競合に五億を取られた」。それ以下の規模の話が出ると、吉川はノートパソコンに目を落とし、すでに別...
動かない迷路
企画部の須藤拓真は、会議室の窓から外を眺めていた。
午後三時。本来なら資料を作成しているはずの時間だ。しかし彼は、机の上に広げたノートを前に、もう一時間以上同じ場所に座っていた。
「須藤、まだ考えてるのか」
ドアを開けたのは、先輩の工藤だった。五十代半ば、入社以来ずっとこの会社で働いてきた人だ...