働き方改革 5件の記事

反論のない会議室

三枝誠一は、社内で導入された新しいAIアシスタントの評価レポートを読みながら、ため息をついていた。  満足度98%。  部長の椅子に座って三年になるが、これほど気持ちの悪い数字を見たのは初めてだった。  株式会社クロスフィールドは、業務効率化のために全社にAIアシスタントを導入した。企画書の壁...
2026-03-31 23:42:22

模範の代償

伊東製作所のシステム開発部には、「天才」と呼ばれる男がいた。  桐生隆志。三十八歳。入社十五年目にして、社内の基幹システムを事実上一人で設計し直した伝説の持ち主だ。朝は誰よりも早く来て、夜は誰よりも遅く帰る。だが桐生の顔にはいつも笑みがあった。コードを書くことが好きで、難問を解くことに喜びを感じ、...
2026-03-26 16:24:30

マニュアルの外側

総務部の吉岡真帆は、入社三年目にして社内規程の見直しプロジェクトのリーダーに抜擢された。三十二歳の彼女にとって、それは嬉しくもあり、重い任務でもあった。 きっかけは、社員アンケートだった。「社内ルールが多すぎて息苦しい」という声が、回答の四割を占めていた。服装規程、備品の使用ルール、会議室の予約手...
2026-02-01 17:33:12

椅子のない部屋

川島誠一は、入社二十三年目の春に、自分の席がなくなっていることに気づいた。 出張から戻った月曜の朝、いつものフロアに上がると、見慣れたパーティションの配置が変わっていた。彼のデスクがあった場所には、フリーアドレス用の共有テーブルが置かれている。 「川島さん、三階の会議室Bに荷物まとめてあります」...
2026-01-15 17:02:37

誰の責任でもない場所

神田の雑居ビル三階に入居する「クイックマッチ・ジャパン」は、飲食店と配達員をつなぐマッチングアプリを運営している。創業四年目、登録店舗は三千を超え、配達員は一万人に迫ろうとしていた。 経営企画部の村瀬康平は、その日の朝から気が重かった。SNSで炎上していた。配達員が商店街で高齢者と接触し、軽傷を負...
2026-01-12 13:52:27