人生100年時代 2件の記事

地図のない航海

三崎誠一は、明和食品の営業企画部で三十二年間働いてきた。来月で五十七歳になる。 「三崎さん、例の件ですが」 隣の席の若手、田村が声をかけてきた。新規取引先との契約書類のことだ。三崎が下準備をし、田村が仕上げる。かつては逆だったが、役職定年で課長の肩書を外してからは、こうした補佐的な仕事が増えた。...
2026-01-04 07:28:57

窓際の椅子

宮本は、カレンダーの日付を見つめた。五十三歳。入社から三十年が経とうとしていた。 「宮本さん、この資料のチェックお願いできますか」 若手の田中が遠慮がちに声をかけてきた。かつては自分も同じように先輩たちに資料を持っていったものだ。宮本は黙って資料を受け取り、デスクに置いた。 三年前、同期の中村...
2025-12-20 06:54:46