人生設計 4件の記事

冷蔵庫に貼られた数字

「中学受験をしたい」 小学五年生の美咲がそう言い出したのは、夕食の片付けをしている最中だった。 中堅メーカーで営業部長を務める山本健一は、思わず手を止めた。妻の恵子も、食器洗いの手を止めてこちらを見ている。 「友達のあかりちゃんが塾に行き始めて、すごく楽しそうなの」 美咲の瞳は輝いていた。そ...
2026-01-15 19:29:34

空っぽの冷蔵庫

山下美和子は、末っ子の息子が家を出た日の夜、久しぶりに冷蔵庫を開けた。 三段の棚には、ほとんど何も入っていなかった。卵が三個と、賞味期限の切れた豆腐と、夫が晩酌用に買った缶ビールが二本。 「今夜、どうする?」 夫の義明が台所に顔を出した。 「外に食べに行こうか」 美和子はそう答えた。二十五...
2026-01-15 17:11:25

地図のない航海

三崎誠一は、明和食品の営業企画部で三十二年間働いてきた。来月で五十七歳になる。 「三崎さん、例の件ですが」 隣の席の若手、田村が声をかけてきた。新規取引先との契約書類のことだ。三崎が下準備をし、田村が仕上げる。かつては逆だったが、役職定年で課長の肩書を外してからは、こうした補佐的な仕事が増えた。...
2026-01-04 07:28:57

残りの時間

総務部の佐藤健一は、五十二歳になった朝、自分の人生を振り返っていた。 入社三十年。与えられた仕事を真面目にこなし、大きな失敗もなく、課長という肩書きを手に入れた。だが、会議室の窓から見える景色は、三十年前と何も変わっていなかった。変わったのは、自分の髪が白くなったことくらいだ。 「佐藤さん、新人...
2025-12-20 13:48:03