中小企業
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四十七階の静けさ
三宅製作所の朝は、油の匂いから始まる。試作専門の板金工場で、従業員は三人。二代目の三宅隆之は、月末が近づくと帳簿の右端ばかりを見るようになった。
「ルミナ・デバイスさん、まだです」
経理を兼ねる妻が、言いにくそうに言った。四百八十万円。筐体の試作と治具の費用で、うちの三カ月分の利益に当たる。
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いちばん細い糸
精密部品メーカー「三和テクノ」の調達課長・桑田は、二十年間ずっと同じ計算をしてきた。一円でも安く。それが会社への忠誠であり、彼のささやかな誇りでもあった。
中でも、山あいの小さな工場「丸金製作所」への発注単価は、社内で「桑田価格」と呼ばれるほど低かった。丸金は三和専用の治具を長い年月をかけて揃え、...
通りの灯
商店街「さくら通り」で三十年、定食屋「まるよし」を営む関口正志は、朝五時に起きて出汁を引くことから一日を始める。妻の和子と二人、十二席のカウンターを切り盛りしてきた。常連は近隣の工場やオフィスで働く人たち。派手な店ではないが、昼時には行列ができることもあった。
異変が起きたのは、市の中心部で大規模...
椅子のない部屋
川島誠一は、入社二十三年目の春に、自分の席がなくなっていることに気づいた。
出張から戻った月曜の朝、いつものフロアに上がると、見慣れたパーティションの配置が変わっていた。彼のデスクがあった場所には、フリーアドレス用の共有テーブルが置かれている。
「川島さん、三階の会議室Bに荷物まとめてあります」...