経営
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減らすための稟議書
汐見信用金庫港北支店の融資係、高梨遥の机に、三輪製作所の借り換え申請が回ってきたのは、月末の夕方だった。
三輪製作所は従業員十二人の金属加工の町工場で、取引は先代のころから続いている。ファイルをめくると、この十年、借入残高のグラフは一度も下を向いていなかった。借り換えのたびに、少しずつ上乗せされ...
修理台帳の白いページ
株式会社ひだまり木工は、職人四人と事務一人の小さな家具工房だ。創業四十年、新しく作るより、直す仕事のほうが多い。
企画担当の水野遥は、三年前からひとつの計画を温めていた。閉校した町の小学校から譲り受けた、体育館の床材で大きな食卓をつくる。何十年も子どもたちが走り回った板には、消えないコートの線と...
十二階の窓
三ツ輪工機の本社十二階、会議室「桐」の窓は、建てられた日から同じ角度までしか開かない。鹿野俊介は、その細い隙間から入る風を背中に受けて、社長の板東と向かい合っていた。
「鹿野くん。うちの売り場は、この三十年で何が変わった」
「……厨房機器そのものは、ずいぶん良くなりました。洗浄機の水量は半分以下...
削った分は、どこへ行ったか
相和建材の西日本支社長として単身赴任した黒沢肇は、着任した週の金曜、支社の損益計算書を三度読み返した。
売上は本社の三分の一。営業利益率はその半分。毎月の役員会で映し出される支社別の棒グラフの中で、西日本だけが低く沈んでいる。四十九歳。管理本部で十年、数字を締める仕事をしてきた黒沢にとって、その低...
待てば戻る、と誰もが言った
三ツ木精機の第二工場は、その朝も静かだった。
生産管理部の宮下佳奈は、稼働ボードの前で立ち止まる。十二本あるラインのうち、動いているのは四本。残りは白いカバーをかけられ、蛍光灯の光をぼんやりと返している。三か月前まで、ここは夜まで音が絶えなかった。
主力顧客の設備投資が一斉に止まった。理由は一つ...
四十七階の静けさ
三宅製作所の朝は、油の匂いから始まる。試作専門の板金工場で、従業員は三人。二代目の三宅隆之は、月末が近づくと帳簿の右端ばかりを見るようになった。
「ルミナ・デバイスさん、まだです」
経理を兼ねる妻が、言いにくそうに言った。四百八十万円。筐体の試作と治具の費用で、うちの三カ月分の利益に当たる。
...
約束の重さ
「三島電機」は創業七十年の中堅家電メーカーだ。主力は業務用の厨房機器で、全国のホテルや飲食店に製品を卸してきた。
二年前の四月、社長に就任した三島健司(五十八歳)は、若手社員を本社の大会議室に集めてこう宣言した。
「旧来の事業で積み上げてきた重荷は、私たちの世代で清算する。君たちの世代に、過去の...