集中力
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踊り場の三分
晴和精機の品質保証部が入る三階は、その春、二十年ぶりに壁を失った。役員が視察先で見てきた「風通しのいい職場」を再現したのだという。仕切り板は撤去され、固定席もなくなり、六十人がひとつの島でつながった。
加瀬理都は、その二週目にはもう限界を感じていた。
検査記録の照合は、数字を一桁ずつ目で追う仕事...
注意の残量
生産管理課の朝は、電話の音から始まる。
サンワ精機第二工場で出荷伝票を扱う二階堂圭太は、その日も型番を取り違えた。桁が一つ違うだけの品番が縦に並ぶ製品群で、彼が打ち込んだのは一行下の型番だった。出荷は止まり、客先への謝罪は課長代理の保科佐和子が引き受けた。
「今度こそ、気をつけます」
二階堂は...
それしかできない、という強さ
三浦健介は会議室の壁に貼られた競合分析のシートを眺めていた。赤いマーカーで「スマホアプリで代替可能」と書かれた付箋が、自社製品の機能一覧のほぼすべてを覆っていた。
「廃盤の方向で検討したいと思います」三浦は資料から目を上げずに言った。「うちの『フォーカスタイマー』は現時点でコモディティです。同機能...
目詰まりの正体
花村紗希は、中堅システム開発会社「セルヴォ・テクノロジーズ」で五年目のエンジニアだった。
朝八時半、デスクに着いてPCの電源を入れる。セキュリティソフトの更新が走り、開発環境が立ち上がるまで四分。メールを確認しようとすると社内ポータルの認証に三十秒。そこからチャットツールを開き、チャンネルを巡回し...