内発的動機
4件の記事
模範の代償
伊東製作所のシステム開発部には、「天才」と呼ばれる男がいた。
桐生隆志。三十八歳。入社十五年目にして、社内の基幹システムを事実上一人で設計し直した伝説の持ち主だ。朝は誰よりも早く来て、夜は誰よりも遅く帰る。だが桐生の顔にはいつも笑みがあった。コードを書くことが好きで、難問を解くことに喜びを感じ、...
休まない男
営業三課の課長・村瀬隆は、毎朝六時に出社し、夜十時まで席を立たない男として社内で知られていた。
「村瀬さんって本当にストイックですよね」
後輩の木下がそう言うたびに、村瀬は曖昧に笑ってやり過ごした。実際のところ、村瀬自身はストイックだと思ったことは一度もない。ただ、営業先の課題を解く方法を考える...
止まれない男と、立ち止まった男
営業部の朝礼が終わると、課長の片桐は自席でため息をついた。
今期、部内のSNS施策を任された若手の宮本が、また問題を起こしていた。自社のビジネスアカウントに、競合他社を名指しで揶揄する投稿を上げたのだ。
「片桐さん、見ましたか。リツイートが三千超えてますよ」
宮本は端末の画面を見せながら笑って...
最後の一杯
青山の路地裏にある小さなバー「風見鶏」で、山崎達也は三十年間カウンターに立ち続けていた。
その夜、常連の大手広告代理店専務・川端が、いつもより早い時間に姿を見せた。
「マスター、いつもの」
川端はスツールに腰を下ろすと、乱暴にネクタイを緩めた。山崎は黙ってハイボールを差し出す。
「今日、つい...