レジリエンス
5件の記事
余白という名の足場
中堅の物流会社、丸和ロジスティクス。東支店の支店長・笹本は、月曜の朝、ビルの管理会社から一本の電話を受けた。「給排水の基幹設備が破損し、復旧の見込みが立ちません。安全のため、当面の立ち入りを止めてください」。築四十年の支店ビルは、その日のうちに使用不能になった。
四十人の社員と、進行中の三百件の配...
不完全な指揮台で
田村剛は、大阪オフィスの椅子に座った瞬間、違和感を覚えた。
ここは、彼が三年前まで毎日通っていた場所だ。IT系ベンチャーで開発チームのリーダーを務める田村は、東京本社に移ってから、自分の作業環境を徹底的に作り込んできた。三十二インチのモニターを二枚並べ、キーボードの打鍵感を試行錯誤で選び抜き、照明...
ハンドルを握る男
朝七時の営業所で、配送ドライバーの堀田誠一(56)はその日のルート表を睨んでいた。二十年以上この仕事を続けてきた堀田にとって、都内の道はすべて頭に入っている。信号の変わるタイミング、渋滞の抜け道、荷物を最短で届ける順序。それが堀田の誇りだった。
「堀田さん、今日から新しいルート管理システム入ります...
失点の記憶
営業部の中堅社員、川島誠一は、三年前の記憶から逃れられずにいた。
当時、彼は新規事業チームのリーダーとして、会社の命運を賭けた大型プレゼンに臨んでいた。相手は業界最大手の製造会社。受注できれば、会社の売上は一気に三割増となる案件だった。
プレゼン当日、川島は完璧な準備をしていたはずだった。しかし...
谷底の営業部長
営業第三部の部長・宮本隆司は、自席のパソコン画面を見つめたまま動けなくなっていた。
午前中に人事部長から告げられた内容が、まだ頭の中で反響している。「来期の組織改編で、営業第三部は統合対象です。宮本さんには関連会社への出向を打診したい」
五十二歳。入社三十年。気づけば、会社に必要とされない人間に...