現場力
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余白のある帳面
巴屋工機の第二工場に、佐久間が生産管理システムの導入案を持ち込んだのは、初夏の朝だった。
本社の企画部から現場常駐に回されて三か月。彼には勝算があった。手書きの日報を電子化すれば、月に四十時間の転記作業が消える。不良の兆候を三日早く掴める。数字は嘘をつかない。会議室のスクリーンに折れ線を映しなが...
二本の矢印
宮下真澄がサンライズ電機・城南店の白物家電売り場に立って、四年目の春だった。
その日、洗濯機のコーナーで足を止めた老夫婦は、しばらく最新型の前で顔を見合わせていた。二十万円を超える、乾燥機能付きの一台だった。
「お二人でお住まいですか」
「ええ。娘は遠くにいるもんで」
「洗濯は、週に何回くらいで...
全方位の人
金曜の夕方、製造ラインで小さな事故が起きた。出荷を待つ製品が台ごと傾き、検品にあたっていたスタッフが手をかすめて軽い怪我を負った。縫うほどではない。だが誰かが撮った写真がその夜のうちに広まり、週末を待たずに「管理体制はどうなっている」「安全を軽んじている」という声が積み上がっていった。
月曜の朝、...