現場力 3件の記事

余白のある帳面

巴屋工機の第二工場に、佐久間が生産管理システムの導入案を持ち込んだのは、初夏の朝だった。  本社の企画部から現場常駐に回されて三か月。彼には勝算があった。手書きの日報を電子化すれば、月に四十時間の転記作業が消える。不良の兆候を三日早く掴める。数字は嘘をつかない。会議室のスクリーンに折れ線を映しなが...
2026-07-27 08:55:36

二本の矢印

宮下真澄がサンライズ電機・城南店の白物家電売り場に立って、四年目の春だった。 その日、洗濯機のコーナーで足を止めた老夫婦は、しばらく最新型の前で顔を見合わせていた。二十万円を超える、乾燥機能付きの一台だった。 「お二人でお住まいですか」 「ええ。娘は遠くにいるもんで」 「洗濯は、週に何回くらいで...
2026-07-24 11:02:33

全方位の人

金曜の夕方、製造ラインで小さな事故が起きた。出荷を待つ製品が台ごと傾き、検品にあたっていたスタッフが手をかすめて軽い怪我を負った。縫うほどではない。だが誰かが撮った写真がその夜のうちに広まり、週末を待たずに「管理体制はどうなっている」「安全を軽んじている」という声が積み上がっていった。 月曜の朝、...
2026-06-20 08:25:21