内省
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読めなかった設計図
営業部の片倉誠一は、社内でも指折りの提案力を持つベテランだった。四十八歳、入社二十六年目。どんな商談でも相手の本音を見抜き、的確な提案を返す。後輩たちは「片倉さんの観察眼は天性のものだ」と口を揃えた。
だが、片倉自身にはずっと引っかかっていることがあった。
入社三年目のこと。当時の上司である...
名前のない設計図
総務部の片山朋子は、自分のことを「要領が悪い人間」だと思っていた。
たとえば、全社イベントの準備を任されたとき、彼女はまずノートを開く。会場の下見、備品の手配、関係部署への連絡、当日の動線、トラブル時の代替案――すべてを付箋に書き出し、時系列で並べ、依存関係を矢印でつなぐ。同僚たちが「片山さん、ま...
反射の王国
広告代理店「ブライト・スター」の企画部長・瀬川雅人は、社内で「光の魔術師」と呼ばれていた。どんな案件でも、旬のインフルエンサーを起用し、SNSのバズを設計し、数字を叩き出す。上層部の覚えもめでたく、四十二歳にして次期役員候補の筆頭だった。
「瀬川さん、今回もすごいですね。初動三日でインプレッショ...