自己分析
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社外の椅子
湊川テクノの資材調達部で、立花孝一は「話が早い男」で通っていた。四十八歳、入社二十六年。設計が無理を言えば協力工場に頭を下げ、経理が渋れば会議の前に廊下で片をつける。社内の誰と誰がどんな貸し借りを抱えているかを、彼は地図のように把握していた。
その地図が急に色を失ったのは、主力の計測機器事業を縮...
裏要件
速水が最後のケーブルを抜いたとき、時計は午後十一時を回っていた。朝の七時半から、ほとんど飯も食わずに机に張りついていた。取引先の基幹サーバーが復旧不能に陥り、彼が一人で呼び出された案件だった。手順書どおりの復元は何度試しても弾かれ、途中でやり方そのものを切り替えた。ライセンスの壁、ドライバの相性、引...
窓際の灯
中堅機械商社の情報システム室は、フロアの一番奥にあった。山岸かおるは三十五歳、入社十年目で、長らく社内の発注画面の細かな改善を一人で担ってきた。「ここに一行コメント欄があると現場が助かる」「この検索は曖昧マッチでないと使われない」――そういう声を拾っては、夜中にこっそり手を入れる。利用者からの礼が、...