傾聴
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反対側の椅子
南雲食品工業の第二会議室は、いつも空調が効きすぎている。
郡司美咲は、手元の資料を三度めくり直した。業務用ソースの定期配送サービス。飲食店が発注を忘れても、これまでの使用量から自動で補充する仕組みだ。半年かけて三十軒の店を回り、そこで何度も聞いた「切らして困った」という言葉を、そのまま企画書に変え...
既知という名の壁
月曜の朝、営業部の田原は淹れたばかりのコーヒーを口に運びながら、入社三年目の木下の話を聞いていた。
「先方の購買部長、最初は鉄壁だったんです。でも雑談で奥さんが釣り好きだって話題になって、それから空気がふっと変わって——」
「ああ、それは典型だな。雑談で懐に入る、新人研修でも教えてるやつだ」
田...
声の重さ
システム開発会社ネクストウェーブで、チームリーダーの黒田俊一は六人のエンジニアを率いていた。その中で最も頼りにしていたのが、入社五年目の園田健太だった。
園田は口数こそ少ないが、納期前のトラブルでも黙々とコードを書き続け、チームを何度も救ってきた。黒田にとって園田は「放っておいても大丈夫な人間」だ...
正しい側の人
営業企画部の小野寺洋介は、自分が正しいと信じていた。
社内の人事評価制度が改定され、マネジメント経験よりもプロジェクト成果を重視する方針に切り替わった。結果、現場でプロジェクトを回してきた若手や中途入社の社員が次々と昇格し、十五年間コツコツと積み上げてきた小野寺は据え置きのままだった。
「これは...