人事評価
5件の記事
稼働率九十八パーセント
分散勤務に切り替えて四か月、営業支援部の数字は悪くなかった。見積書の作成件数は前年比で一割増え、差し戻し率は下がった。宮下がその二つを月次資料に並べたとき、役員の一人が短く言った。
「では、なぜ受注は伸びていない」
宮下は答えを持たなかった。持っていないというより、答えの形が数字になっていなかっ...
三年目の物差し
紙コップのコーヒーが冷めていくのを、水島は見ていた。
会議室のスクリーンには、外部の助言者がつくった資料が映っている。入社三年以内に「基礎資質スコア」を測り、上位二割を幹部候補として確定させる。残りは実務職として育てる。人材開発課の課長である水島に求められていたのは、その制度の設計だった。
「早...
点のつかない部屋
坂内あかりが社内基盤「ひろば」の担当になったとき、社長から言われたのは一言だった。「部署の壁を薄くしてくれ」
ミナカワ生活研究所は、洗剤や台所用品をつくって六十年になる。工場と開発と営業が、それぞれの言葉で仕事をしていた。同じ製品の話をしていても、三つの別の話に聞こえた。坂内はその三つを一つの部屋...
見えない柱
真野恵子が辞めると聞いたとき、営業企画部の誰もが驚いた。
株式会社ハルカゼは社員四十名ほどの中堅メーカーで、恵子は入社六年目の中堅社員だった。特別目立つタイプではない。派手なプレゼンをするわけでも、大口の案件を取ってくるわけでもない。だが、部の仕事が滞りなく回っていたのは、間違いなく彼女のおかげ...
自分だけの物差し
営業部の月次会議が終わると、会議室には重い沈黙が残った。売上ランキングがスクリーンに映し出され、上位三名には拍手が送られる。一方で、下位に名前が並んだ者たちは、足早に席を立っていく。
入社三年目の川島翔太は、自分の名前が下から四番目に表示されているのを見て、小さくため息をついた。
「また、あの位...