信頼
2件の記事
見出しの釣り針
朝の編集会議で、高梨の記事はPVが部内最下位だった。地方の事務手続きにミスがあり、納付が十日遅れて数万円の延滞金が生じた――ただそれだけの、地味な記事である。
「内容は正確です」と高梨は言った。
「正確さは前提だよ」編集長は静かに返した。「読まれなければ、書いていないのと同じだ」
彼はホワイトボ...
約束の重さ
「三島電機」は創業七十年の中堅家電メーカーだ。主力は業務用の厨房機器で、全国のホテルや飲食店に製品を卸してきた。
二年前の四月、社長に就任した三島健司(五十八歳)は、若手社員を本社の大会議室に集めてこう宣言した。
「旧来の事業で積み上げてきた重荷は、私たちの世代で清算する。君たちの世代に、過去の...