論考集 (32件)
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余剰の倫理学 ―「なくても平気」が解放する力と、その正しい使い方
## はじめに
10年ほど前のことです。私は150万円をインデックスファンドと外国株に投じた後、ほとんど忘れていました。証券会社から届く運用報告書も、まともに読んだ記憶がありません。コロナショックで世界の株式市場が30%以上暴落していた2020年の春も、私は自分の口座残高を確認しませんでした。...
全員、人の話を聞いていない——「自分の納得」が行動変容の唯一のエンジンである
## はじめに
ある日、こんな話を聞きました。
誰かが、その場にいない相手のことを「あの人、全く人の話を聞かないんだから!」と愚痴っていました。すると愚痴られた当人が、「あなたもよ」と返したそうです。
愚痴を言った人は、ひどくショックを受けたといいます。
私はこの話を聞いて、ふと考えました。...
ミクロアホ学とマクロアホ学 ── 人間の不条理を体系化する新しいレンズ
## はじめに
「なんでこんなことになってしまうのか」
この問いが、私の思考の原点にあります。個人が明らかに自分の首を締めるような判断をする。組織が誰の目にも不合理な意思決定を繰り返す。国家が、後世から見れば到底理解しがたい集団狂気に飲み込まれていく。そのたびに、私は喉の奥に何かが刺さったような...
お前、死にたいのか? ―リスク回避本能が仕掛ける「普通の罠」について―
## はじめに
「なぜリスクを取れないのか」という問いを、多くの人が一度は自分に向けたことがあるはずです。新しいことへの挑戦を前にして足がすくむ自分、確実な道ばかりを選んでしまう自分、そして「もっと大胆に生きられたら」と思いながらもやはり引いてしまう自分に、居心地の悪さを感じたことがある人は少なく...
脳キャリブレーション大作戦!〜「幸福の原価」を下げる、最も賢い生存戦略〜
## はじめに
突然ですが、プレーリーハタネズミという小さな生き物の話をさせてください。
草原に生きるこのネズミは、生涯同じパートナーと連れ添い、夫婦で熱心に子育てをします。一方、山岳地帯に住む近縁種のサンガクハタネズミは、交尾が終わればさっさと別れる乱婚型。見た目はほぼ同じなのに、なぜこれほど...
二周まわって天然へ——諸行無常と永遠渇望、そして感情労働からの解放
## はじめに
「諸行無常」という言葉を、私たちはほとんど全員が知っています。
平家物語の書き出し「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり……」という一節は、義務教育で必ず習います。「この世のすべては移ろう」——その事実は、頭の中には入っています。
にもかかわらず、私たちはどうしてこれほど苦しむ...
2万円のスマホが問いかけること――ブランドという記号と、自分が求めるものの本質
## はじめに
スマートフォンを選ぶとき、あなたはどんな基準で選んでいますか。
2万円台で購入できる中国メーカーのスマホと、13万円を超えるフラッグシップモデル。性能だけを見れば、普通のLINEや動画視聴、ウェブブラウジング程度の用途であれば、両者の体験に本質的な差はほとんどありません。...
30%引きの手羽元と派手の因果逆転 ─ 幸福受容体から現代社会を読み解く
## はじめに
ある夜のことです。まいばすけっとで30%引きになっていた国産手羽元を買い、数年前にAmazonで800円で買った電子レンジ用蒸し器に入れて7分30秒。萌え辛唐辛子と醤油だけを合わせて、キリンのGood Aleを傍に置いて食べました。
これが、ベラボーにうまい。
笑ってしまうほど...
旅行したい気持ちが証明すること――日常に没入できない人が観光産業を支える
## はじめに
かつて私は、「明日が楽しみで夜なかなか眠れない」という状態を経験したことがあります。
子供のころ、遠足や運動会の前日にそういう状態になったことは誰にでもあるでしょう。しかし私が経験したのは、ただの平日の前夜の話です。特別なイベントも、旅行の前日でもありません。翌日やるべき仕事、考...
よしあき君と憲法9条──「劣位」を認定する者は誰か
## はじめに
憲法9条をめぐる議論が、また熱を帯びています。改憲派は「現実を直視せよ」と言い、護憲派は「平和の理念を守れ」と言います。しかし私が感じる違和感は、この対立軸そのものに対してです。
どちらの側も、ある前提を共有しています。「軍事力を持つ国が上位で、持たない国が劣位だ」──この前提に...
好奇心こそが出力を決める——GIGO再考と、ホームズが天才でない理由
## はじめに
「Garbage In, Garbage Out」——コンピュータの黎明期、1950年代に生まれたこの格言は、今日もプログラマーの口から、データサイエンティストの発表から、生成AI談義の場から、呪文のように唱えられる。略してGIGO。ゴミを入れればゴミが出る、という至極当然の話。
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独身偽装はなぜ見抜けないのか――システムエンジニアが解剖する「もう一人の自分」のアーキテクチャ
## はじめに
私の論考に「スキ」と「フォロー」をくれた方のnoteを読んだのが、この文章の出発点です。そこには、ある女性が4ヶ月にわたって既婚男性に「独身だ」と信じ込まされ、月20万円のデート、片道2時間の訪問、結婚を匂わす将来の話を経験した末、提訴に至り、貞操権侵害が認定されて約150万円の慰...
FIREから降り、FISEで生きる――燃えない人だけがFIREから自由になれる
## はじめに
ここ数年、日本の経済メディアで「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」という言葉を見ない日はほとんどありません。「○千万円貯めて早期リタイアしました」という成功譚と、「FIREしたけど会社員に戻りました」という失敗譚が、まるで対に...
「3秒」を許さなかった男——マイクロフリクションが創造性を静かに殺すメカニズムと、AI時代に問われる3つの力
## はじめに
あなたに一つ問いたいことがあります。
「たった3秒の操作を、なぜ我慢できないのか」と聞かれたら、あなたはどう答えるでしょうか。
下書きツールで文章を書く。Shift+Enterでコピーする。ブラウザのタブをクリックする。入力欄にペーストする。送信する。時間にしてわず...
なんちゃって関係論——装飾を剥がした先にある、自立者同士のゆるやかなつながり
## はじめに
「フレンドフレーション」という言葉を、最近目にされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。Friend(友人)とInflation(インフレ)を掛け合わせた造語で、物価高の長期化にともない、若い世代が友人関係にもコスパ的な視点を持ち込み始めた現象を指すそうです。「飲み会に六千円払う...
感謝は能力である――落差の記憶が育てる幸福論
## はじめに
「ありがとう」という言葉を、私たちは一日に何度使うでしょうか。挨拶のように口にすることもあれば、深い感慨とともに噛みしめる瞬間もあります。同じ三文字の言葉が、人によって、場面によって、まるで重量の違う通貨のように扱われています。
本稿で私が考えたいのは、「そもそも感謝とは何か」と...
魂の叫びをExtreme Melodic Death Metalに込めて――「Rise Above」という自己革命
## はじめに
先日、私がこれまで作曲した楽曲の中でも、特別な位置を占める一曲をSpotifyに公開しました。
**「Rise Above」**
Suno v5.5によるリミックス版として仕上げたこの曲は、Extreme Melodic Death Metalという(世に存在しない...
凡人最強説——なぜ「小さく生きる」ことが最強の生存戦略なのか
## はじめに
2026年4月、女優・広末涼子さんが芸能活動の再開を発表しました。2025年の交通事故、逮捕、病名公表からわずか1年足らずでの復帰宣言。SNSでは「早すぎる」という声が溢れ、同時に彼女の金銭的困窮を危惧する声も寄せられています。
私はこのニュースを見て、ある持論のことを思い出しま...
解決させちゃったら困るビジネス──「答えはとっくに出ている」のに、なぜ私たちはそれを実行できないのか
## はじめに
2026年2月、日経平均株価が史上初めて5万9000円台を突破しました。
このニュースを見たとき、私の頭に最初に浮かんだのは、リーマンショック後の記憶でした。あの頃の日経平均は7000円台。そこから約8倍です。もし2009年に日本株のインデックスファンドを買って、ただ放っておいた...
掃除という哲学——損失回避性を逆手に取り、認知資源を取り戻す「最も身近な行動療法」
## はじめに
私は、掃除が好きです。
こう書くと、几帳面な性格の人間が自分の美徳を語っているように聞こえるかもしれません。しかし、この論考で私が伝えたいのは、そういう話ではありません。掃除という行為の中に、行動経済学、認知科学、アテンションエコノミー、心理療法、そして哲学が凝縮されているという...