AIペルソナ座談会 #036
最前列の修羅場を、母はただ見ていた——53年目に初めて聞いた、昭和のコンサートの夜
このコンテンツは、私 kentrue (yousystem) がある男性から聞いた、その母親の若い頃の思い出話を元に、複数のAIペルソナで座談会を開催した記録です。登場するアイドルグループや女優の名前は伏せています。
こちらは掛け合い版。理屈屋の学者、皮肉屋の悪魔の代弁者、愛の天使キューピッド、夜の街の観察のプロ mm が、短いセリフでぶつかり合います。肩の力を抜いて、テンポでお楽しみください。
— kentrue (yousystem)
今日のメンバー
学
学者
「まず前提を整理しましょう」が口癖の理論家。正しいけれど話が長い
悪
悪魔の代弁者
美しい理屈ほど疑う皮肉屋。わざと逆側に立って穴を突く
キ
キューピッド
感情と関係の体温を守る天使。受け止めながら見落とされた景色を差し出す包容役。
m
mm
夜の街で7年、指名で食ってきたキャバ嬢。男の本性と席の空気を読むプロ。女の子を守る気持ちは誰より強い
座談会(掛け合い)
司会
推しの話をしていたら、親の知らなかった顔が急に出てきた――そんな経験、ありませんか。50代の男性が、お母さんと推し活の話をしていたときのことです。昭和40年代、流行に冷めていたお母さんは、クラスメイトに拝み倒されてアイドルのコンサートへ付き添い、なぜか最前列で観ることになった。クラスメイトはアイドルへの熱狂的な声援と、ゲストの若い女優へのブーイングを、同じ口でやってのけた。すると女優が睨み返した。同じ夜を、4人はそれぞれ別の席で見ていたわけです。さあ、今日のメンバーに語ってもらいましょう。
学
学者
ええ、まず前提を整理しましょう。熱狂とブーイングが同じ夜に起きたことは、集団心理の観点からは整合しています。集団は"内側の人"への熱狂と"外側の人"への排除を、同じエネルギーで行う。ファン心理の基本構造です。
悪
悪魔の代弁者
ずいぶんきれいにまとまりましたね、教授。ひとつだけ確認しますが、ブーイングした子は、自分が二つのことを同時にやっているという自覚があったんですか?
学
学者
……おそらく自覚していなかったでしょう。群集状況では個人の自己監視機能が低下するため――
m
mm
せんせ、みりが訳すね。ノってたらブレーキが壊れるってことじゃん。お店でもあるよ、ボトル3本目から急にタメ口になるお客さん。
キ
キューピッド
でも、どうしてゲストの女の子だったのかしら。推しのそばに若い女性が立った。それだけで、好きな人を取られるような気持ちになったんじゃない?
m
mm
それ、今でいう同担拒否とかガチ恋だよ。お店にもいるもん、推しの子に別の子がヘルプで付いただけで機嫌悪くなるお客さん。好きなのはわかるけど、それもう"好き"じゃなくて"自分のもの"になってるんだよね。
学
学者
好意と独占は、似ていて別の感情です。好意は相手の幸せを望みますが、独占は相手の周りの人を減らしたがる。最前列という近さが、その境目を消してしまったのかもしれません。
悪
悪魔の代弁者
では、その矛先を向けられた側の席に移りましょうか。最前列から浴びたブーイング、その正面で女優は"雨"を受け続けた、というわけです。
キ
キューピッド
ブーイングって声だけじゃないのよ。顔も体全部で"あなたはいらない"って言ってくる。最前列から受けたら、矢が一本どころか嵐みたいに降ってくる感じじゃないかしら。
m
mm
で、睨み返したんだよね、女優さん。みり、それ正解だと思う。逃げなかったじゃん。
学
学者
理論的には"感情の自己開示"です。理不尽に耐えることと感情をぶつけることの間で、彼女は後者を選んだ。
悪
悪魔の代弁者
"選んだ"のか"溢れた"のか、どちらです。プロとして計算して睨んだのか、計算を超えた何かが出たのか。どちらかで、話の重みがまるで変わりますよ。それに、これはお母さんの記憶です。本人に聞いたら、まるで違う答えが返ってくるかもしれない。
学
学者
ぐ……そ、それは非常に区別が難しい問いで……(ブツブツ)
m
mm
みりは、あれ"本指名"だと思う。最前列のその子への。"ちゃんと見てたよ、あなたのこと"っていう睨みだよ。プロだって、笑顔で全部飲み込まなきゃいけないわけじゃないもん。
キ
キューピッド
それ、素敵な言い方ね。睨みって普通は怒りのイメージだけど、"ちゃんと見ていた"という指名――的を外さない矢が返ってきた、ってことね。
悪
悪魔の代弁者
さて、一番気の毒な席がまだ残っています。そのすぐ横で歌っていたアイドルたち。目の前で、自分たちのファンと自分たちのゲストが睨み合っている。
学
学者
当時の慣習では、パフォーマーがステージからファンの行動を止めることは非常に難しかったでしょう。ファンを突き放すこともできないし、ゲストに恥をかかせることもできない。
m
mm
それ、卓で揉めてる横でニコニコしてなきゃいけない黒服さんと一緒じゃん。止めたら空気が壊れる、止めなきゃ女の子がかわいそう。……あの席、ホントに胃が痛いんだよ。
悪
悪魔の代弁者
笑顔で歌い続けながら、心の中では"頼むから穏便に"。彼らにとっては、たぶん曲のどこよりも長い数分間だったでしょうね。
キ
キューピッド
そして最後の席。誰のファンでもなかったお母さん。熱狂にも怒りにも巻き込まれずに、その夜の全部をちゃんと見ていたのよ。
悪
悪魔の代弁者
では最後の問いです。そんな面白い話が、なぜ53年間一度も出てこなかったのか。
学
学者
隠していたわけではないと思います。記憶というのは、引き出す文脈がないと浮かび上がってきません。"推し活"という言葉が、あの昭和の夜と共鳴して、扉が開いたのではないでしょうか。
m
mm
みりね、閉店後の更衣室でぽろっと話す子っているんだよ。席では絶対言わないのに。……息子さんと推し活の話で盛り上がった時間が、お母さんにとってはあの更衣室だったんじゃないかな。
キ
キューピッド
そうよ。"お母さん"としてじゃなく、あの日最前列にいた女の子に戻れた瞬間があったの。53年間ずっと誰かの母だった人の、役割の隙間から、一人の女子高生がひょこっと顔を出した。
悪
悪魔の代弁者
となると、息子さんが53年目に聞いたのは、"お母さんの若い頃の話"ではなく――"お母さんになる前の人"の話だったわけですね。
学
学者
家族のことは全部知っているつもりでも、知っているのは"親"という役割の顔だけなのかもしれません。……理論で言えば"証言"と呼ぶのでしょうが、私には少し、そう呼ぶのが惜しい気がします。
m
mm
せんせ、珍しくいいこと言った。みりも今夜、お母さんに電話しようかな。
今日の持ち帰り
同じ夜でも、席が違えば別の出来事
熱狂したクラスメイト、睨み返した女優、板挟みのアイドル、冷めた付き添い。一つの場面に、4つの物語が重なっている
"好き"と"自分のもの"は別の感情
推しのそばの誰かを追い払いたくなったら、それはもう好意ではなく独占。最前列の近さは、その境目を消しやすい
親という役割の外に、知らない一人の人がいる
53年付き合っても、話す文脈がなければ出てこない記憶がある。推し活の雑談が、母になる前の女の子を連れてきた
この座談会は note でも読めます:
最前列の修羅場を、母はただ見ていた——53年目に初めて聞いた、昭和のコンサートの夜(note)