論考集 (60件)
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ソフトウェアは消えない、増殖する ― 生成AI時代に人間が手放してはいけない「見ている世界」について
## はじめに
2026年に入ってから、世界中のソフトウェア株が凄まじい暴落を経験しました。きっかけは、ある大手AI企業が立て続けに発表した強力なエージェント機能群です。SalesforceやAdobeのようなSaaSの巨人から、サイバーセキュリティ企業に至るまで、時価総額が軒並み吹き飛び、一説に...
正しさは、なぜ届かないのか ― 特殊詐欺データと「占い」という防御装置
## はじめに
私はシステムエンジニアです。普段はコードを書き、データを扱い、動くものを世に出すことを生業にしています。その私が、ある晩ふと警察庁の特殊詐欺統計をダウンロードしたことから、一本の論考を書くに至りました。
きっかけは小さな好奇心でした。けれど、生のデータと向き合ううちに、私...
文鎮化する美しさ——ルッキズムが崇める価値の正体について
## はじめに
「美しいものには価値がある」。
この一文に、私はまったく異論がありません。整った造形に心を奪われること、洗練された所作に見惚れること、それは人間の自然な感性であって、否定する必要などないと思っています。むしろ、美を感じ取れる感受性は人生を豊かにしてくれる贈り物です。
ところが、...
承認という名のフランケンシュタイン ―― なぜ成功者は「同意がある」と本気で信じてしまうのか
## はじめに
ある事件を見聞きしたとき、私たちの心は驚くほど素早く動きます。「許せない」「クズだ」「厳罰に処すべきだ」。この反応自体は、人間として当然のものです。傷つけられた人がいて、その苦しみが現実にある以上、怒りは正しい場所から湧き出ています。
私はまず、この論考の出発点で一つだけ、はっき...
脆弱性と堅牢性は、同じ脳の表と裏である ―ATMの前で気づいた「認知のアーキテクチャ」という話
## はじめに
先日、私は銀行のATMの前で、ほんの数秒だけ背筋が冷たくなる経験をしました。
入金されているべき金額は3万円のはずでした。ところが通帳に印字されていたのは30万円。桁がひとつ多いのです。明らかに先方の手違いで、私はすぐに電話で連絡を入れました。問題は金額そのものではありません。そ...
「痩せること」は誰のためか――ダイエット産業と健康診断が仕掛ける「普通の罠」
## はじめに
「食事を控えて、運動を増やせばいい。」
ダイエットの方法論を一言で言い表すなら、これ以上でもこれ以下でもありません。中学生でも理解できる、極めてシンプルな物理法則です。消費カロリーが摂取カロリーを上回れば、体重は減ります。この事実に例外はなく、裏道もショートカットも存在しません。...
「なめられたくない」という欲求の正体——脆いプライドが描く悲劇と、本物の自律が育む豊かさ
## はじめに
一つのニュース記事が、私の思考を揺さぶりました。
タイトルは「なめられたくなくて…」キャバクラオーナーに事件情報漏らした警察官を書類送検(FNNプライムオンライン(フジテレビ系)) - Yahoo!ニュース。記事のURLは以下の通りです。
https://news.yahoo....
真の実力者はなぜ孤独を選ぶのか——舎弟という名の「自由からの逃走」
## はじめに
「舎弟ってなんで必要なのか?」
これは一見シンプルな問いです。しかし、この問いの立て方をよく見ると、実はきわめて鋭い逆転の発想が含まれています。一般的には「なぜ舎弟を持つ者がいるのか」と問われますが、この問いはそれではありません。「なぜ必要なのか」という問いは、「必要でない者もい...
余剰の倫理学 ―「なくても平気」が解放する力と、その正しい使い方
## はじめに
10年ほど前のことです。私は150万円をインデックスファンドと外国株に投じた後、ほとんど忘れていました。証券会社から届く運用報告書も、まともに読んだ記憶がありません。コロナショックで世界の株式市場が30%以上暴落していた2020年の春も、私は自分の口座残高を確認しませんでした。...
全員、人の話を聞いていない——「自分の納得」が行動変容の唯一のエンジンである
## はじめに
ある日、こんな話を聞きました。
誰かが、その場にいない相手のことを「あの人、全く人の話を聞かないんだから!」と愚痴っていました。すると愚痴られた当人が、「あなたもよ」と返したそうです。
愚痴を言った人は、ひどくショックを受けたといいます。
私はこの話を聞いて、ふと考えました。...
ミクロアホ学とマクロアホ学 ── 人間の不条理を体系化する新しいレンズ
## はじめに
「なんでこんなことになってしまうのか」
この問いが、私の思考の原点にあります。個人が明らかに自分の首を締めるような判断をする。組織が誰の目にも不合理な意思決定を繰り返す。国家が、後世から見れば到底理解しがたい集団狂気に飲み込まれていく。そのたびに、私は喉の奥に何かが刺さったような...
お前、死にたいのか? ―リスク回避本能が仕掛ける「普通の罠」について―
## はじめに
「なぜリスクを取れないのか」という問いを、多くの人が一度は自分に向けたことがあるはずです。新しいことへの挑戦を前にして足がすくむ自分、確実な道ばかりを選んでしまう自分、そして「もっと大胆に生きられたら」と思いながらもやはり引いてしまう自分に、居心地の悪さを感じたことがある人は少なく...
脳キャリブレーション大作戦!〜「幸福の原価」を下げる、最も賢い生存戦略〜
## はじめに
突然ですが、プレーリーハタネズミという小さな生き物の話をさせてください。
草原に生きるこのネズミは、生涯同じパートナーと連れ添い、夫婦で熱心に子育てをします。一方、山岳地帯に住む近縁種のサンガクハタネズミは、交尾が終わればさっさと別れる乱婚型。見た目はほぼ同じなのに、なぜこれほど...
二周まわって天然へ——諸行無常と永遠渇望、そして感情労働からの解放
## はじめに
「諸行無常」という言葉を、私たちはほとんど全員が知っています。
平家物語の書き出し「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり……」という一節は、義務教育で必ず習います。「この世のすべては移ろう」——その事実は、頭の中には入っています。
にもかかわらず、私たちはどうしてこれほど苦しむ...
2万円のスマホが問いかけること――ブランドという記号と、自分が求めるものの本質
## はじめに
スマートフォンを選ぶとき、あなたはどんな基準で選んでいますか。
2万円台で購入できる中国メーカーのスマホと、13万円を超えるフラッグシップモデル。性能だけを見れば、普通のLINEや動画視聴、ウェブブラウジング程度の用途であれば、両者の体験に本質的な差はほとんどありません。...
30%引きの手羽元と派手の因果逆転 ─ 幸福受容体から現代社会を読み解く
## はじめに
ある夜のことです。まいばすけっとで30%引きになっていた国産手羽元を買い、数年前にAmazonで800円で買った電子レンジ用蒸し器に入れて7分30秒。萌え辛唐辛子と醤油だけを合わせて、キリンのGood Aleを傍に置いて食べました。
これが、ベラボーにうまい。
笑ってしまうほど...
旅行したい気持ちが証明すること――日常に没入できない人が観光産業を支える
## はじめに
かつて私は、「明日が楽しみで夜なかなか眠れない」という状態を経験したことがあります。
子供のころ、遠足や運動会の前日にそういう状態になったことは誰にでもあるでしょう。しかし私が経験したのは、ただの平日の前夜の話です。特別なイベントも、旅行の前日でもありません。翌日やるべき仕事、考...
よしあき君と憲法9条──「劣位」を認定する者は誰か
## はじめに
憲法9条をめぐる議論が、また熱を帯びています。改憲派は「現実を直視せよ」と言い、護憲派は「平和の理念を守れ」と言います。しかし私が感じる違和感は、この対立軸そのものに対してです。
どちらの側も、ある前提を共有しています。「軍事力を持つ国が上位で、持たない国が劣位だ」──この前提に...
好奇心こそが出力を決める——GIGO再考と、ホームズが天才でない理由
## はじめに
「Garbage In, Garbage Out」——コンピュータの黎明期、1950年代に生まれたこの格言は、今日もプログラマーの口から、データサイエンティストの発表から、生成AI談義の場から、呪文のように唱えられる。略してGIGO。ゴミを入れればゴミが出る、という至極当然の話。
...
独身偽装はなぜ見抜けないのか――システムエンジニアが解剖する「もう一人の自分」のアーキテクチャ
## はじめに
私の論考に「スキ」と「フォロー」をくれた方のnoteを読んだのが、この文章の出発点です。そこには、ある女性が4ヶ月にわたって既婚男性に「独身だ」と信じ込まされ、月20万円のデート、片道2時間の訪問、結婚を匂わす将来の話を経験した末、提訴に至り、貞操権侵害が認定されて約150万円の慰...